夢洲から
日差しを避ける陰が少ない大阪・関西万博の会場で、中心部にある「静けさの森」が貴重な涼を提供している。
約2・3ヘクタールの敷地にアラカシ、イロハモミジ、クヌギなど約1500本が並ぶ。多くは、1970年の万博の会場だった大阪府吹田市の万博記念公園や、大阪市内の鶴見緑地にあった木々。倒木などを防ぐために伐採される予定だったが、「命のリレー」として移植された。
森のデザインを手がけた忽那裕樹さんは、会場の中心に位置するこの森を、人と自然の結節点にしようと考えた。
風向きや気候の変化、木の高さや曲がり方の「多様性」。木々を根付かせるためにコンピューターで多くの変数を調整しながら配置を考え、万博が終わった後も成長できる森にしたという。
忽那さんは「100年先を見据え、むき出しの自然ではなく、『人が適度に手を入れた自然』をつくった」と話す。
立ち並ぶパビリオンの間を抜け、森に入る。木立を吹き抜ける海風が、葉や枝をそよがせる音が響く。人との調和が考え尽くされた「未来社会の森」の心地良さを堪能した。
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。